収穫
10月末、柿の実が十分に熟した頃、市田柿の収穫がはじまります。
美味しい市田柿作りのためには、よく色付いて完熟した実を原料に使うことが第一条件です。収穫の時も、しっかりとオレンジに色づいた実を選んで、ひとひとつ木からもぎ取ってゆきます。
柿暖簾
収穫された柿の実は、皮をむき、つるして干してゆきます。この光景は、農家の軒先などで昔から見られ、柿暖簾、柿すだれと呼ばれていました。
この柿暖簾はその後、約一ヶ月間かけてゆっくりと自然乾燥させてゆきます。この地方特有の、天竜川から立ち上る朝霧のおかげで、じっくりと時間をかけて、熟成しながら干し上がってゆくため、あのぽってりとした柔らかい市田柿ができあがるのです。
天日干し
11月末頃、ある程度まで乾燥した市田柿は、今度は、「天日干し」と「粉だし」の作業に入ります。
まず、のれん状につるしてあった柿の実を一つ一つはずし、へたの軸をはさみで切り取ります。そして、少し揉んで柔らかくした柿を並べて天日にさらします。この、揉んで天日にさらす、という作業はこのあと何日も繰り返します。
天日干しをしていると、太陽の光のおかげでしょうか、柿の実が、ますます濃い朱色にきれいに色付いてくるのがよくわかります。
揉んで粉を吹かせる(粉だし)
この時期の柿の実は、表面は乾いていますが、実の中はまだまだゼリー状で、あんぽ柿のような食感です。市田柿の場合は、柿の実を何回も揉むことによって、餡のような食感を持った干し柿に変わってくるのです。
また、この「揉む」という作業は実の表面に細かな傷を付けて、中から糖を含んだ水分を呼び出す効果もあります。この糖分が乾いて結晶になることで、全体に、真っ白な粉が吹いたような姿に変わってゆきます。
市田柿の完成
12月の半ば、表面に真っ白な粉をまとって、実を割ると餡のようにねっとりとした完成品の「市田柿」ができあがります。
出来上がった市田柿は、果物でありながら、上質な和菓子のように柔らかく上品な甘さを特徴としています。