新規就農までのお話

農業を志すまで

パラグアイの写真 青年海外協力隊として活動中、私はパラグアイの農村部で野菜隊員として巡回指導を行いました。パラグアイ農家の収入は極めて少ないのですが、多品目の作物や果樹を栽培し、家畜を飼い、そして家族が一緒に働き共に生きている姿は、食の面でも生活の面でも豊かに思えました。そうした農民たちと仕事をしていくなかで、農家の持つ総合的な豊かさや、自分自身で農作物を育て売ってみたいという思いから、帰国後は日本で農業をやりたいと考えるようになりました。

 就農先を探して

就農に際しては、新・農業人フェアや知り合いを通じて、就農候補地を現在の妻と2人で見て回りました。学生時代に農家で実習した経験やパラグアイでの活動経験から、農業をするなら、生産から販売まで手がけたいと感じていたので、就農するにあたって重視したのは、消費者に喜んでもらえるような農産物を栽培し、販売できる環境でした。
就農から2年目まで生活費を支給してくれるという市町村もあったのですが、自分達のやりたい農業の実現が見出せず、経済的な支援のある就農先は諦めました。

 飯田市との出会い

 そんな時、飯田市で就農したパラグアイの隊員OBから、飯田市は就農するには非常に良い場所だという話を聞き、それではと思い、飯田市のワーキングホリデーに参加し、2軒の農家で農作業のお手伝いをしました。
お世話になったどちらの農家も閉鎖的なものを感じさせないおおらかな人柄で、人間関係を築きやすい土地柄のように思えました。また、農家で頂く果物やお米が非常に美味しく印象的でした。飯田市は、農作物の産地としてはあまり有名ではないのですが、日照時間や標高など美味しい農産物を作る条件が揃っているとのことで、ここであれば、消費者に喜んでもらえる農産物を栽培することが出来ると思い、飯田市への就農を決めました。
飯田市では、新規就農者に対して経済的な支援はほとんどないのですが、担当者に就農したいという意思を伝えると、親身になって家や畑を一緒に探してくれたり、飯田市に住むことが決まってからは、自治会等へのあいさつをセッティングしてくれたりと、ソフト面での支援が充実しているように思えました。

 現在とこれから

 2018年現在、就農して14年目となりました。
地元の地名「虎岩」をお借りして「虎岩旬菜園」という農園名を付け、栽培品目もフルーツトウモロコシ、特別栽培米、市田柿、山菜、原木キノコ、と徐々に増えてきました。
また、季節の味をいつでもご家庭で味わっていただけるよう、加工品づくりにも取り組んでいます。何年か試作を重ね、ついに、フルーツとうもろこしスープ、自家製トマトのパスタソース、つぶつぶコーンと野菜のカレーが出来上がりました。
現在は、イタリアントマトを使った無塩トマトジュースを販売しています。

 新しい就農者を迎えて

わたしが農業を営む地域は、いわゆる中山間地域です。平らな畑が少なく、効率的な大規模農業をやっていくには条件的に悪い土地です。
しかし、山間の土地を生かせば、豊かな自然の恵みを受けることができます。その恵みは、経営にも生かすことができますし、食生活を豊かにもしてくれます。
里親研修では、栽培技術だけではなくて、農業経営や、山菜やキノコ作り、家庭菜園、加工品作りなど地域の特性を生かした農業を お伝えできればと考えています。そして、なによりも研修生が農業で生計を立てられるようにお手伝いしていきたいです。
平成22年に里親として認定され、平成23年5月に最初の1組を受け入れ、現在までに3組のご夫婦が研修を終え、同じ飯田市で農家として独立されました。
我が家での里親研修は、スイートコーン、水稲、市田柿の栽培・加工と農業経営を中心に学んでいただきます。このほかに、家庭菜園のやり方や農業機械の使い方など農業全般の研修や、就農の時に必要となる農地や住居も一緒に探しています。

虎岩旬菜園 上野真司